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病院設計×運営改善──ハード&ソフトを一体で最適化するプロセス解説

病院・高齢者施設の経営環境は、診療報酬改定や人材不足、急速な医療 DX など複数の要因が絡み合い、”建てて終わり”の時代は遠い昔となりました。

本記事では 運営視点を最初から設計に織り込む 6 つのステップ を整理し、ハード(建物)とソフト(運営)の統合で経営指標を伸ばすアプローチを解説します。

 

 

 

はじめに――“建てて終わり”ではない時代へ

日本の高齢化率は 29.3%(2025 年推計)に達し、医療・介護需要は右肩上がり。

複雑化する診療報酬制度と人員確保難が重なり、経営の最適化=設計の最適化 と言っても過言ではありません。従来の「完成した箱に運営を合わせる」発想を転換し、リスクを設計段階でつぶし込む〈運営改善型〉プロセスが求められています。

 

 

 

1.STEP1:経営課題ヒアリング――指標を共有する

目的

・経営陣・現場・設計者が共通言語で課題を語れる状態をつくる

・財務・人員・稼働率など “モニタリングすべき指標” を列挙し、優先順位を合意形成

 

実践ポイント

・財務:収益率、コスト構成比、資金繰りサイクル

・人員:職種別充足率、離職率、教育コスト

・稼働率:病床利用率、個室稼働日数、手術室稼働率

 

 

 

2.STEP2:業務フロー×空間フローのマッピング

目的

・業務プロセスと建物動線を重ね合わせ、ボトルネックを可視化

・改善余地の大きい “優先改修領域” を抽出

 

実践ポイント

・バリューストリームマップ(VSM) を医事・看護・リネン工程に適用

・動線図 でスタッフ歩行距離や資材搬送経路を色分け表示

・ムダ動線を赤、停滞を黄など信号色で示すと議論が進む

 

 

 

3.STEP3:プロトタイプ検証――シミュレーション

目的

・机上プランを実物大/仮想空間で検証し、運用イメージを共有

 

実践ポイント

・1/1 スケールモックアップ:段ボール壁・テープ床で病室を再現し動線確認

・VR ウォークスルー:ヘッドセットで完成後の環境を体験しヒューマンエラー要因を抽出

・現場スタッフも参加するワークショップ形式が効果的

 

 

 

4.STEP4:ハード設計――柔軟性・拡張性を確保する発想

目的

・将来の制度改定や患者属性変化に即応できる “余力設計” を確保

 

実践ポイント

余力設計の手法 主なねらい
ユニバーサルゾーニング 病床・外来・検査部門を標準グリッドで配置し、用途入替を容易に
可動間仕切り 感染症流行や医療機器大型化に応じ、病室をフレキシブルに分割/統合
将来配管ルート確保 PS や床下ピットを増設し、水回り移設や ICT 配線追加を短工期で実現

 

 

 

5.STEP5:ソフト導入計画――人員配置・ICT・ルール整備

目的

・新しい空間に “人・業務・ICT” をシームレスに移行させ、立ち上げ期リスクを最小化

 

実践ポイント

・人員配置シミュレーション:AI シフト作成ツールで労務コストと患者待ち時間を同時最適化

・ICT インフラ:電子カルテ、RTLS、ナースコールを建築と同時発注し、ケーブル経路を一括管理

・運営マニュアル:感染対策・緊急対応・清掃頻度を部門横断で統合

 

 

 

6.STEP6:運用後フォロー――PDCA をデザインに組み込む

目的

・開設後の実績データを設計にフィードバックし、継続的に経営指標を伸ばす

 

実践ポイント

・ポストオキュパンシー評価 (POE) で稼働率・歩行距離・温熱環境を半年~1 年周期で測定

・KPI 達成度をダッシュボード化し、設計者・運営者・メンテナンス会社で共有

 

 

 

7.まとめ――6 ステップを循環させ、経営と設計を同時に磨く

1.経営指標の共有

2.業務×空間のマッピング

3.プロトタイプ検証

4.余力設計

5.ソフト導入計画

6.POE による運用改善

 

これらを循環させることで、現場の “声” をリアルタイムに反映しながら建物の価値を持続的に高められます。施設ごとに課題は異なるため、各ステップの比重と順序を柔軟に組み替えることが成功の鍵です。

 

 

 

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