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病院改修・増築で失敗しない5つのチェックポイント

なぜ今”計画的改修”が求められるのか

2024年の診療報酬改定では、医療の質向上と提供体制の強化が重点施策として掲げられました。それにともない、施設整備や老朽化インフラの改善が急務とされています。特に1970〜80年代に建てられた中小病院では、設備の老朽化が深刻化しつつあり、安全性や機能性の低下が医療提供の妨げとなっています。

改修・増築計画において最も避けるべきは、十分な検討を経ない「見切り発車」です。計画が不十分なまま工事を進めると、診療停止による収益損失や予期せぬ追加費用が発生し、経営への影響は計り知れません。この記事では、そうした失敗を防ぐための5つの重要なチェックポイントをわかりやすく解説します。

 

 

 

チェック:事前ヒアリングで”診療体制”を可視化

改修・増築に先立ち、現場の実情を正確に把握することが重要です。設計段階で医療スタッフの声を丁寧にヒアリングし、診療体制や将来的な構想を反映することが、機能的な施設設計の第一歩となります。

 

以下のようなヒアリング項目を共有・整理し、図面へ反映していきます:

・診療科構成と稼働状況

・医師・看護師・患者の動線(交差や混雑の有無)

・感染症対策における導線確保状況

・外来・入院・救急搬送の動線分離の必要性

・将来の病床増加・新診療科設置計画

・機器の大型化やICT化に伴う設備要求

 

これらの情報は、単なる要望の羅列ではなく、設計に反映するべき「診療体制の可視化データ」として扱うべきものです。

 

 

 

チェック:診療を止めない”工程フェーズ分割”

病院改修の大きな課題は、診療を継続しながら工事を進行させることです。そのためには、施工工程をフェーズに分け、診療活動への影響を極力減らす必要があります。

 

主な手法は以下のとおりです:

・ゾーニング(区域分け):工事区域と診療区域を完全に分けて、安全な動線を確保する

・仮設エリアの設置:一時的な診察室やナースステーションを設けて診療を継続

・夜間・休日の作業実施:騒音や振動の大きい作業は、患者の少ない時間帯に実施

 

これらの工夫により、休診期間を最小限に抑えることが可能となります。施設の状況に合わせて、柔軟にスケジュールを組むことが重要です。

 

 

 

チェック:設備更新の”盲点”――医療ガス・非常電源・空調

構造やレイアウトの改修に気を取られがちですが、病院特有の設備にも細心の注意が必要です。とくに以下の項目は、実務上しばしば課題として挙げられています

 

・医療ガスの再配管:新設エリアへの供給ラインが設計段階で十分に検討されておらず、後から追加工事が発生するケースがあるといわれています。

・非常用電源の容量不足:増築や設備更新により電源負荷が増加し、既存の発電機容量では対応が難しくなる事例も報告されています。

・空調設備の風量・負荷バランス崩壊:既存設備との調整が不十分なまま進めた結果、空調の効率が著しく低下したという声もあります。

 

これらは確実に起きるとは限りませんが、想定されるリスクとして事前に把握し、専門業者と連携して対策を講じることが推奨されます。

 

 

 

チェック:”ついで改修”でコストを圧縮

改修対象が限定的であっても、同フロアや隣接エリアの老朽部分を同時に改修することで、将来的な手戻りを防ぎ、トータルコストの抑制につながります。いわゆる「ついで改修」は、建築実務において有効とされる手法のひとつです。

 

代表的な例:

・トイレ・洗面所の配管更新を、壁・床開口のタイミングで同時に実施

・照明器具のLED化を、配線工事と同時進行で行う

・仮設設備の導入にあわせて、消防・避難設備の再点検を行う

 

一見すると費用が上がるように感じるかもしれませんが、将来発生しうる二重工事や運用停止の回避により、長期的にはコスト削減に寄与する可能性があります。

 

 

 

チェック:将来の増築・用途変更を見据えた余力設計

短期的な要件だけでなく、将来の拡張や機能転用を見据えた設計は、病院経営に柔軟性と安定性をもたらします。

 

注目すべき設計要素:

・余剰スペースの確保:倉庫・バックヤード・スタッフエリアをやや広めに確保し、将来的に病室や診療スペースに転用可能に

・電源容量・分電設備の拡張性:医療機器やICT機器の増設に備え、容量に余裕を持たせる

・ICT配線・空配管の導入:将来の電子カルテ更新やネットワーク機器導入に備え、配線の柔軟性を確保

 

このような余力設計は、見えにくいながらも長期的な資産価値を支える「予防的投資」といえます。

 

 

 

まとめ――5つのチェックで”想定外”を防ぐ

病院の改修・増築は、単なる施設更新ではなく、今後の経営基盤を形づくる重要なプロジェクトです。以下の5つのポイントを押さえることで、診療の継続性や将来への柔軟な対応が実現できます

 

1.医療現場の声を基にした診療体制の可視化

2.診療を止めない工程フェーズの分割

3.医療設備の見落としを防ぐ総合的な設計

4.手戻りを防ぐ「ついで改修」による効率化

5.増築・用途変更を見据えた余力の確保

 

これらを踏まえて改修計画を立てれば、思わぬ休診やコスト超過といった”想定外”を回避し、安定した医療提供体制の維持が可能になります。

 

 

 

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