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ユニット型特養が選ばれる理由とコスト最適化のポイント

介護業界で進む“居住系シフト”

近年、介護業界では従来型の特別養護老人ホーム(以下、従来型特養)から、ユニット型特別養護老人ホーム(以下、ユニット型特養)への移行が加速しています。

厚生労働省の統計でもユニット型の整備割合は年々上昇しており、入居者の生活の質(QOL)を重視した“居住系”へのシフトが鮮明です。その背景には、高齢者を単なる「ケアの受け手」ではなく、一人の生活者として尊重する考え方の浸透があります。

本記事では、ユニット型特養が選ばれる理由を利用者・家族・運営者の三方向から整理し、企画・設計・運営の各フェーズでコストを最適化するポイントを具体的に解説します。

 

 

 

1.ユニット型特養とは――従来型との5つの違い

比較項目 ユニット型特養 従来型特養
居室構成 原則すべて個室 多床室が中心
共同生活室 各ユニット(10人程度)に設置 大規模な食堂・談話室を共有
ケア方針 個別の生活リズム・嗜好に配慮 集団での一斉対応が中心
スタッフ配置 ユニットごとに専属スタッフ 全体を兼務する体制が多い
生活リズム調整 起床・就寝・食事時間を柔軟に設定 施設全体のスケジュールに従う

 

ユニット型は家庭に近い環境を再現できる点が大きな特徴です。自室での自由な時間や静かな生活空間を確保しやすく、利用者満足度向上につながります。

 

 

 

2.入居者・家族が評価する心理的・機能的メリット

・小規模単位の安心感:10名以下の固定メンバーで共同生活を送るため、見慣れた顔ぶれとの関係が早期に築かれやすく、特に認知症高齢者の混乱を軽減できる可能性が指摘されています。

・生活リズムの個別化:起床・就寝・食事・入浴を本人のペースに合わせやすく、「生活を自分でコントロールできる」という実感が得られやすい点もメリットです。

・認知機能維持の可能性:国内大学の小規模研究では、ユニット型居住者のほうが認知機能(MMSEスコアなど)を維持しやすい傾向が示唆されています。

・家族の安心感:画一的なケアではなく「その人らしい生活」が可能な環境として、家族からの評価も高いと報告されています。

 

 

 

3.運営者が得られるメリット――稼働率と人員配置の最適化

・介護報酬加算:ユニット型個室や夜勤職員配置加算など、手厚いケア体制が評価される項目が複数あります。

・スタッフ定着率の向上:小規模単位のチームケアにより職員と利用者の関係性が深まりやすく、離職率低下につながる可能性がある一方、施設間で差が出る点には留意が必要です。

・稼働率の安定:ユニット型を理由に入居希望が集まるケースが増え、結果として稼働率向上に寄与する事例が報告されています。

 

 

 

4.コスト最適化のポイント

<モジュール設計>

・標準寸法の統一:居室・水回りをモジュール化することで設計と施工を効率化。

・水回りの集約配置:配管距離を短縮し、工事コストとメンテナンス負荷を低減。

・多目的共用部:将来の用途変更に対応しやすく、改修コストを抑制できると期待されます。

効果はプロジェクト条件に左右されるため、初期段階で詳細試算が必須です。

 

<耐火木造 + プレカット>

・耐火木造:準耐火基準を満たす木造構造により、RC造より工期短縮・基礎コスト圧縮が可能とする事例がある一方、坪単価が増すケースも。地域・設計条件別の比較検討が不可欠です。

・プレカット工法:工場加工により構造部材の精度を高め、現場作業を短縮。品質均一化によるクレーム抑制効果も期待できます。

・心理的価値:木造であることで、温かみのある施設にすることができます。

 

<運営段階のエネルギー設計>

・高効率設備:インバータ空調・LED照明・高断熱サッシは定番の省エネ策。

・EMS導入:電力使用を可視化し、ピークカットと年間光熱費削減を狙います。

・事前シミュレーション:施設規模・運用パターンによって削減幅が大きく変動するため、エネルギーシミュレーションで費用対効果を確認しておくことが重要です。

 

 

 

5.まとめ――ユニット型特養で実現する“質×コスト”の両立

ユニット型特養は、利用者のQOL向上と運営者の経営メリットを同時に追求できる施設形態です。モジュール設計・耐火木造・エネルギー設計といった多角的なアプローチを組み合わせることで、初期投資とランニングコストを最適化しながら、高い居住性と稼働率を実現できます。

重要なのは「設計段階から運営を見据える」という発想です。施設を“建てて終わり”ではなく、“運用しながら磨く”という視点が、長期的な成功を左右します。

 

 

 

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