木造耐火構造の特養に学ぶ——快適性と環境配慮を両立する新技術
これまで特別養護老人ホームといえば、鉄骨造やRC造が主流でした。しかし近年、環境配慮や温かみのある空間を重視した「木造耐火構造」への注目が高まっています。都志デザインでも、木造耐火構造は安全性や快適性に加え、条件によってはコスト面でもメリットが見込める構法として提案しています。
本記事では、事例なども参考にしながら、木造耐火構造が持つ技術的な特徴と、その建築的価値を解説します。
1.なぜ木造が再注目されているのか
脱炭素社会やSDGsの推進により、建築分野でも環境負荷を抑える素材として木材が再び注目されています。木材は再生可能な資源であり、製造時のCO₂排出量が少ないうえに、断熱性や調湿性に優れた自然素材です。さらに、木の香りや手触りは心理的な安心感を与えるとされ、高齢者施設との相性が良い素材と考えられています。
都志デザインは、こうした木の持つ特性を介護空間に活かしながら、従来の鉄骨造・RC造では得られにくい“ぬくもり”を建築の中に取り入れています。加えて、木材は軽量で施工性に優れており、構造設計とコストの両面でメリットをもたらす場合があります。ただし、施工条件や地域材の可否など前提条件により評価は変わるため、計画段階での慎重な検討が欠かせません。
2.「木造耐火構造」とは何か
木造耐火構造とは、国土交通大臣の認定を受けた部位構成により、建築基準法で求められる所要の耐火性能を確保し得る木造の設計手法です。木造でも「1時間耐火外壁」や「30分耐火階段」など、鉄骨造やRC造に匹敵する安全性を確保できる設計が可能です。従来の木造建築の課題であった「火災への弱さ」を克服し、耐火建築物として認められることで、都市部や介護施設など高い安全性が求められる用途にも適用が可能になっています。
都志デザインはこの構法を特養設計に導入し、環境配慮と防災性能を両立させた施設づくりを実現しています。
3.採用されている主要技術
木造建築には、特徴的な工法がいくつかあります。例えば「Gウォール工法」は、高耐震壁を採用することで室内側の耐力壁を軽減し、自由な空間の演出が可能です。また、「Gフレーム工法」は大断面集成材による門型ラーメン構造を用いる構法で、開放的な空間を実現できます。
4.内装の木質化がもたらす快適性
木造耐火構造の特養では、内装の木質化も大きな特徴です。内壁や天井には天然木突板の連続シート、不燃材規定を満たす木質パネル、スギ材の腰壁などが使用されています。これにより、視覚・嗅覚・触覚に働きかける“ぬくもり”が施設全体に広がります。
木質仕上げはリラックス感をもたらすとの報告があり、入居者の快適性向上や職員の心理的負担軽減に寄与する可能性が指摘されています。また、床暖房やパネルヒーティングなどの快適設備と組み合わせることで、冬でも暖かく身体への負担が少ない環境をつくり出しています。
5.施工上の工夫とメリット
木造耐火構造のもう一つの利点は、施工の柔軟性にあります。とある施設では、クレーンを使わずに建てられる「建ておこし工法」を採用しました。この工法は、条件によっては重機の導入制約がある狭小地などで有効な選択肢となります。
都志デザインでは、設計から施工まで一貫してコストを意識した取り組みを行い、品質を維持しながらも効率的な建築を目指しています。
6.木造特養が目指すこれからの姿
木造耐火構造の特養は、環境配慮・コスト・快適性をバランス良く備えた「持続可能な介護施設」として注目されています。自然素材と先進技術を融合させることで、入居者にとってやさしく、職員にとっても働きやすい空間をつくり出します。また、木造のしなやかさと耐火性能を兼ね備えた設計は、災害時にも強い“あたたかい防災建築”としての可能性を広げています。
なお、用途・規模・法規要件・敷地特性に応じた個別検討が不可欠であり、早期段階からの構造・設備・コストの統合設計が成功の鍵になります。
木の力で「やさしさ」と「強さ」を両立させる——それが、これからの介護施設建築に求められる姿といえるでしょう。
7.まとめ
木造耐火構造は、介護施設の新しい選択肢として大きな可能性を持っています。環境への配慮、入居者の快適性、そして高い安全性を同時に実現することで、これまでの鉄骨造・RC造の常識を超える新しい価値を提供します。
本記事の技術名称・仕様記述は都志デザイン介護セミナーの資料に基づく紹介であり、適用可否や効果はプロジェクト条件により異なります。都志デザインは、これからも「環境と人にやさしい介護施設」の未来を切り拓いていきます。
都志デザインでは、病院や介護施設の建設・増築についての無料セミナーを定期的に開催しております。
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